プロローグ
年が明けてしまいました。
15年続けてきた年末の横浜旅行。ホテルニューグランドでの2泊3日。今年から、子どもたちは一緒ではありません。
年末に書き上げようとしていたこのブログ、気がついたら年を越して、2月になっていました。しかし、それでもいいんです。記憶というものは、少し時間を置いた方が、かえって鮮明になることがあります。昨年の年末に一コマを、いま、ここに書き留めておきます。
1.出発
2025年12月28日、10時過ぎ。
「大丈夫? 忘れ物ない? 全部積み込んだ?」
返事の隙を与えない、妻の連続した問いに
「はい、はい」
車での移動です。電車などの決められた時間に縛られない出発です。10時には出ようねと、荷物を積み込んでいましたが、電話が急に入ってきたり、今ここでしなくてもという用事を思い出したりと、、出発は結局、20分を過ぎていました。ゆったりとエンジンをかけました。二泊三日の旅の始まりです。
この旅は、本当に旅だろうか。荷物を積み込みながら、思い出していました。すでに15年以上。この年末の旅を続けてきました。最初の頃は、子どもたちも一緒でした。まだ小さかった彼らは、車の中ではしゃぎ、ホテルの部屋を走り回っていました。それが今では、それぞれの人生を歩み始めています。今年から、この旅は夫婦二人だけのものになります。
「このイベントはいいでしょう?さあ、無事故で行きましょう!」
妻が言いました。
「ここまで忙しくしてわざわざ行くのか、って毎年思うんだけどね」
年賀状はギリギリまで印刷、一言を添えて。大掃除は無理やり終わらせました。年末の慌ただしさの中、時間を「こじ開けて」出かける、これが私たちの年末の旅です。
この旅さえなければ、もう少し余裕がある年末が送れるかもしれない。
でも、
「こじ開けてまで出かける。これがいいんだ」
それが答えです。一年を振り返り、新しい年へ切り替えであり、そのためにはいつもと違う時間と場所、必要なんです。
2.ホテルニューグランドに到着
横浜に着いたのは、昼前でした。
ホテルニューグランド。山下公園の目の前に建つ、重厚な石造りの建物。1927年開業。戦前、日米野球大会に来日したベーブ・ルースが宿泊しました。戦後、マッカーサー元帥が滞在しました。歴史の証人のようなホテルです。
昨年、初めて泊まりました。今回で、2年連続です。
「ご飯を食べよう」
妻が言いました。
チェックインの時間にはまだ早いです。中華街は目の前にあります。
チェックイン前でも車は受け入れてくれます。ホテルの駐車場は立体駐車場。車専用のエレベータで地下3階に。1台1台のスペースは本当にギリギリです。最初に選んだスペースでは、停めることができてもドアを開くには大変に狭く、降りることができません。
「やっぱり痩せないとな」
天井の低い、コンクリートの壁につぶやいていました。少しは余裕のあるスペースに車を停めました。
駐車場からつながるエレベーターに乗って、フロントのある1階に。駐車の受付、荷物を預かってもらい、さあ、中華街に。

3.人混みの中で
中華街は、人で溢れていました。
食べ歩きをする若者たち。スマートフォンで写真を撮るご婦人。スピーカーフォンで大声で通話している人もいる。耳に携帯を当てず、音を出しながら歩いている。
正直なところ、少しうんざりしました。だが、私たちもその群衆の一部です。
できるだけ人の少ない路地を選んで歩きました。妻の後ろを離れすぎず、近すぎず。並んで歩けもしません。


4.萬珍樓にて
まだまだチェックインまで時間があります。
萬珍樓本店に行きました。食通の友達と以前に行ったお店だそうです。妻の有事である、食通の彼女が言うのであれば、間違いありません。
知人が言っていました。
「お金出せばいくらでも美味しいところがある。でも少ないお金でどれだけ美味しい店を選ぶか、それが中華街だよ」
この時間、混んでいます。待合席には多くの人が座って談笑しています。
「1時間は待ちますよ。いいですか?」
他にお店の目当てもありませんので、持て余す時間を削る意味でも
「待ちます」
「携帯番号を教えていただければ、連絡しますよ」
「お願いします。街歩きしてます」
お土産さんなどを見てまわりました。どんどんお店から離れていきました。1時間も待つのだからの気分が、いい街歩きになっていました。
すると30分ぐらいして、電話が鳴ります。
「用意できました、大丈夫ですか」
「少し離れてしまいましたが、すぐに行きます」
慌てて、お店に向かいました。
混んでいると言われていたのですが、空席が目立ちました。団体客がいたのでしょうか。それとも中華特有の振る舞いなのでしょうか。入り口から席まで案内、落ち着いた席、派手な置物、颯爽と動くお店の方、どれも緊張させるものでした。
お酒を飲まなくなったのはいつ頃でしょうか。お茶で料理を堪能しました。円卓に次々と運ばれてくる料理を前に、談笑しながら箸を動かしました。
実は、ゆっくりと食べるようにしました。見栄を張りました。いつものペースで食べていると、先に食べていた他のお客さんより早く終わってしまいます。お腹も空いていたので、油断をするとどんどん箸が動いてしまいます。

5.エレベーター
チェックインを済ませ、部屋へエレベーターで向かいます。
若い人たちも多くいます。若い頃はこのようなホテルには泊まれませんでした。皆さんの働きぶり、稼ぎぶり、すごいなと、変なところで感心してしまいました。
どんな思いでこのホテルを選んだのでしょうか、毎年利用しているのでしょうか。いろいろな思いで、またいろいろな用事で泊まりに来ています。さらにこの年末の過ごし方として、このホテルに宿泊しているのはどうしてだろう。さらに皆さんの快適に過ごすホテルライフの実践編も知りたくなりました。
ふとした思いが駆け巡りながら、扉が開きました
さらに上階へ向かう若者たちを残して、降りました。
6.部屋
部屋に入りました。
今回の部屋は、マリンタワー側です。窓からは隣のホテルとマリンタワーの上の方が見えて、覗き込むようにして横浜ベイブリッジが見えます。それでも海は見えました。昨年はみなとみらい側で、海はこちらの方がよく見えます。
部屋の中には、iPhoneなどを充電するコンセントがいくつも用意されていました。歴史あるホテルと言いながら、現代のニーズをきちんと押さえています。
スーツケースを開ける音。引っ越しの気分。ちょっと落ち着かないです。
非日常を味わうのか、日常の延長なのか。
今回の旅は、日常の延長でありながら、場所を変えて、気分もちょっと変えて、考える時間を確保ていくことです。

7.一人の時間
朝4時に起きました。来年の目標を書き上げる時間です。誰にも邪魔されずに自分だけの時間を満喫しています。
妻を起こさず、静かに。
パソコンを開いて、「今年はこれができたな、これもできたな」と来年の終わりに書いたかような過去形で記入していきます。
11月あたりから、昨年の分からコピーして、作っては寝かせ、作っては寝かせ、とあれこれ2ヶ月、取り組んできました。いよいよ仕上げる時間がやってきました。
来年は仕事を完全退職して、いわゆる無職・年金生活が始まります。 これまでの延長であれば、コピーするだけで手直しも簡単でしたが、今回は一から作り直す、取り組みとなりました。
役割の一つであった仕事の部分はすべて削除になります。
いかに生きていくかを問い続ける時間になりました。
朝から頭がフル回転。朝のコーヒーを飲みながらのタイプ。
年末の恒例行事の一つが終わりました。

8.朝はマック
お腹が空いてきました。ホテルの近くには、コンビニもあれば、レストランもあり、そしてマクドナルドもあります。
朝食は今回、2日間ともマクドナルドで朝マックのセットをいただきました。
颯爽と、ホテルを出て、朝マックを買いに行く。ドアマンに「おはようございます」と言って、出発。
ほとんど誰も歩いていない道を歩くのはいい気分。車もほとんど通っていません。波の微かな音が聞こえてきます。
そして、ビニール袋を下げながら、また挨拶して、ホテルに入り、部屋に戻ります。
こんな贅沢はありません。

9.ホテルニューグランド「ザ・カフェ」で名物ドリア
「お腹すいたね」
妻が言いました。
このホテルの本館1階には、コーヒーハウス「ザ・カフェ」があります。ドリア、ナポリタンやプリンアラモードは今では全国どこでも食べれる有名なメニュですが、、これらはホテルニューグランドの発祥と言われるそうです。
「予約が取れるか、聞いてくれるね」
当日の予約は受け付けていない、お昼には込み合って、待ってもらうしかない。ランチメニュー提供時間開始早々であれば、比較的空いているのではないか、との情報を入手してきました。
妻にとっては朝食兼昼食として、早めの食事にしました。パフェを加えて、ホテル発祥の3品を注文し、二人ですべて味わいました。コーヒーはお替り自由で、お願いするたびに注いでくれます。
「少し飲みすぎたな。でも値段は高いね。ホテル価格だね」
歴史あるホテルならではの体験をしました。お店には若い人たちもいっぱいおります。お金の使い方が上手だなと、また感心してしまいました。
席から見える景色は、奥は海があるため、ビルなどの遮るものがありません。街路樹と共に見える通りには、優雅さ、情緒を感じます。別世界にいる気分になりました。

10.散策
食後の運動を兼ねて、私たちは山下公園を歩きました。記念撮影をしている人たちがいます。この近くに住んでいる人でしょうか、走っている人もいます。観光客であふれています。日本語以外も多数飛び交っています。
氷川丸が、静かに停泊しています。水上バスの発着の場所も近くにあります。
みなとみらいの高層ビル群に向かって歩きました。
歩きながら、いつも思い出します。靴が合っていないことを。
いつものように妻が先を歩きます。私は、その後ろを歩く。
ホテルの近くに、美味しいパン屋をみつけました。見ただけでしたが、ホテルニューグランドの総料理長が関係しているパン屋、S.Weil by HOTEL NEW GRANDです。大変おしゃれでおいそうでした。次回はここでも。

11.慶華飯店
夜は、慶華飯店に行きました。
ワンタンがおいしいとの評判でここに決めました。
1時間以上、店の前で待ちました。お店は、10人も入ればいっぱいになる大きさです。団体客もあり、3グループでお店がいっぱいになっていました。お酒も入れば、その分、待ち時間が延びていきます。
とはいっても中華街の情報が不足しています。美味と金額に満足する店を見つけるのは本当に難しいです。
「どうする、待つ?」
他に行く当てもありませんので、寒い中、待ちました。
お店に入りました。昨日の萬珍樓とは打って変わって、気軽な店です。海老ワンタン、五目ワンタンメン、海老チャーハン(小)を注文しました。
妻が一言。
「昨日より、こっちの方がいいわね」
私も同じことを思っていました。
豪華さではなく、心地よさ。それが、今の私たちには合っています。
聞こえている他の方の注文を聞きながら、来年もまた来ようと、ホテルへ戻りました。

12.作戦会議
いよいよ今回の旅のメインです。来年の予算を考え、そしての作戦会議です。
「打ち合わせで出てこないものは絶対に買わないからね」
来年は、iPhoneやApple Watchを更新しようと考えています。声を大にしておかないと、はじかれるので、しっかり伝えます。
そんな小遣い程度の話から、畳の新調も計画しています。
病気になったらどうしよう、家電が壊れたらどうしよう、など、本来ならばもっと多くのことに心を配らなければいけません。
しかし、それは、
「仮定の話にはお答えできません」
と政治家が語る言葉に同調します。その時はその時で考えることにしました。
一つ一つ、あれがしたい、これがしたい、予算はどのくらいとパソコンに打ち込みながら、まとめていきました。
特に4月から始まる新たな生活について、家事の分担の攻防戦です。
「仕事がないんだから、このぐらいはね」
妻主導で話が展開していきました。

13.チェックアウト
11時、チェックアウト。
駐車場は12時まで無料で借りています。中華街で弁当を買い出してから出発しようと、妻が提案しました。
私たちは再び中華街に向かいました。混雑は相変わらずで、深入りせず、近くのお店で購入しました。
車専用のエレベータへ乗り込むため、何度も切り返し、バックし、また前進し、と今更ながら、運転の下手さを実感します。
ホテルを後して、外人墓地にも車で向かいました。いつの間にか、行き止まりに。
「ここは歩いて回るところだね」
来年の散策コースを決めました。
そろそろ横浜を出る時間です。

エピローグ
この旅は何だったのでしょうか。
世間で言う「忘年会」になるのだろうか。いや、違います。忘れるための旅ではありません。むしろ、確認するための旅といえるかもしれません。
この一年、何をしてきたか。来年、何をすべきか。
「少し場所を変えることにより、日頃感じない、考えないことに意識を向ける」
それが、この旅の意味です。
15年以上、続けてきました。子どもたちがいた頃も、今も、本質は変わりません。
疲れを癒し、英気を養い、新年を迎えるための準備。
来年もまた、ホテルニューグランドで新年を迎える準備をするだろう。そう決めて、私たちは横浜を後にしました。
高速道路に乗る。
妻が、小さく息をついた。
「さあ、新年の準備を」
私は、ただ運転を続けました。
あとがき
ホテルニューグランドには、専用のアプリがあります。会員になると、予約が安くなります。来年の年末も、すでに予約を入れました。今年より部屋も広く、値段も低予算となりました。
将来、スイートルームに泊まることができるでしょうか。
それは、まだわかりません。
だが、それでいいんです。
わからないからこそ、来年も、その先も、この旅を続ける理由になります。
施設情報・アクセス
ホテルニューグランド
住所: 〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町10番地
TEL: 045-681-1841(代表)
チェックイン: 15:00 / チェックアウト: 11:00
歴史: 1927年(昭和2年)開業。関東大震災後の横浜復興のシンボルとして建てられた。マッカーサー元帥、チャップリン、ベーブ・ルースも宿泊した歴史的建造物。
アクセス:
- みなとみらい線「元町・中華街駅」1番出口より徒歩1分
- 山下公園前
- 首都高速横羽線「横浜公園出口」より約5分
駐車場:
- 立体駐車場(地下3階)
- 宿泊者: チェックイン日12:00〜チェックアウト日12:00まで無料
- 車高制限: 2.0m / 車幅制限: 1.85m
- ※スペースが狭いため、大型車は事前確認推奨
宿泊料金の目安(2025年12月時点):
- 本館スタンダードツイン: 25,000円〜35,000円(2名1室)
- タワー館スタンダードツイン: 20,000円〜30,000円(2名1室)
- ※年末年始は料金が変動します
- ※公式アプリ会員は割引あり
予約方法:
- 公式サイト・アプリ経由が最もお得(会員割引適用)
- 楽天トラベル、じゃらんでもポイント還元あり
- 年末年始は3ヶ月前から予約可能
- キャンセルポリシー: 宿泊日の7日前まで無料(プランにより異なる)
萬珍樓 本店
住所: 〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町153番地
TEL: 045-681-4004
営業時間:
- 平日 11:00〜15:00, 17:00〜22:00
- 土日祝 11:00〜22:00
定休日: 毎週月曜
予算: ランチ 2,000円〜 / ディナー 5,000円〜
慶華飯店
住所: 横浜市中区山下町150【広東道】
TEL: 045-641-0051
営業時間:
- 月・火・木・金 11:30〜15:00, 17:00〜20:00
- 土・日 11:30〜20:00
定休日: 水曜
予算: 1,000円〜2,000円
人気メニュー: 海老ワンタンメン、五目ワンタンメン
コーヒーハウス ザ・カフェ
場所: ホテルニューグランド本館1F
営業時間: 10:00〜21:00(ラストオーダー 20:30)
予算: ランチ 2,500円〜 / カフェ 1,500円〜
名物: ドリア、ナポリタン、プリンアラモード(すべて当ホテル発祥)
予約: 当日予約不可。開店直後(10:00〜11:00)が比較的空いている。
コーヒーお替り: 無料
S.Weil by HOTEL NEW GRAND
住所: グランドメゾン山下公園1階(横浜市中区山下町31番地7)
営業時間: 8:00〜19:00
由来: ホテルニューグランド初代総料理長サリー・ワイルの名を冠したベーカリー
特徴: ホテルの伝統を受け継ぐパンとペイストリー

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